DHA・EPA豊富な秋刀魚を食べると早死に?1日のDHA・EPA摂取量目安とは

私たちは「中性脂肪値が高い」「血圧が低い」などとよく言いますが、この「高い」「低い」を決める値が基準値です。健康診断を受けたことがあれば、検査結果の用紙に記載された「基準値」を見たことがある方も多いでしょう。

「基準値」とは、国際的に認められている方法で、「一定の条件を満たす健康な人達を集め、その検査結果の95%を平均化した値を設定するものである」とされています。簡単に言えば、「健康な人100人中95人の測定結果の平均値」ということです。今回は、私たちが自分の健康状態を把握するために必要な「基準値」についてまとめてみました。

2014年4月に「日本人間ドック学会(以下、学会)と健康保険組合連合会(以下、健保連)が、血圧や中性脂肪を含む肥満度について検査項目の基準値を緩和すると発表した」という内容を「健康基準、広げます!」「男性の中性脂肪値は高くても健康」などという見出しでマスコミ各社が一斉に報道しました。大きな話題になったので、覚えている方も多いかと思います。

記事と一緒に「新基準」となる数値も公表されましたが、学会は「基準値の緩和といった報道は誤りで、公表されたデータは大規模調査をした結果で、あくまで報告データです」と報道を否定しました。ですからもちろん、今現在も「基準値」に変更はありません。

しかし、「基準値を見直した方がいいのではないか」という議論が活発になってきていることは事実です。ある調べでは、検査をする医師たちにアンケートをしたところ「今の日本の基準値は適正だと思う」と答えた医師はわずかでした。

「今の基準値は適正ではない」と答えた医師の中には「性別や年齢でもっと基準値を細かく分ける必要がある」と考えている医師も多くいました。実際、学会と健保連が報告データとして公表した基準値の中性脂肪の値は、男性は39〜198mg/dl、女性は32〜134mg/dlと男女別に分けられてます。

また、中性脂肪値と関係が深い「コレステロール値」は、男女別、年齢別とより細かく分かれています。このように、見直しの動きはあるものの、それでも世界基準に比べると、まだまだ日本の基準値は厳しすぎるとする声は多く聞かれます。

実は、世界基準の中性脂肪値はなんと「1000mg/dl」と一桁違う、日本の基準値とは比べ物にならないくらい高い数値なのです。ここまで違うと、「日本の基準値が厳しすぎる」というより「基準値そのものが信じられなくなった」という方もいるかもしれません。

基準値が曖昧なのであれば、「高い」と言われた中性脂肪値を、生活習慣の改善をせずにそのままにしておいてもいいかと言うと、そうではありません。中性脂肪値が高いと動脈硬化を進行させ、「心筋症や心筋梗塞を発症する引き金になりうる」という事実に変わりはありません。

中性脂肪値は、血液検査でしか測定することができないため、年に1回か2回の健康診断や人間ドッグでしか、自身の値を知ることはできません。ですから、次の検診で基準値内の「異常なし」の合格をもらえることを目標に、中性脂肪値を改善しようと思う気持ちは分からないでもありません。

ですが、中性脂肪値の改善の目的は「来月の健康診断のため」ではないのです。中性脂肪値を改善する本当の目的は「これから続く将来の自分の身体のため」です。そのためには、長続きする生活習慣の改善法を見つけることが何よりも重要なのです。

健康によいとされる「サンマ」を食べると早死にする?

「秋刀魚が出ると按摩(アンマ)が引っ込む」という諺があるように、サンマは昔から健康食として、多くの日本人が好んで食べてきた魚です。事実、青魚であるサンマには中性脂肪を減らすDHA・EPAが多く含まれており、現在も健康食として親しまれています。

しかし、「サンマ=健康食」という方程式は、実は成り立たないのではないか?という疑惑が浮上しています。疑惑の発端は「日本で一番サンマを食べている県は青森県。また、日本一男性の平均寿命が短い県も青森県」という厚生労働省と総務省が発表したデータにあります。

「サンマを食べると寿命が短くなる」は本当に事実なのでしょうか?

寿命と食べ物の関係や、嗜好品が健康に及ぼす影響を調べたりする学問の分野に「疫学」があります。疫学の世界では「Aが原因でBになった」といった因果関係は成り立ちません。つまり「サンマを沢山食べたことが原因で平均寿命が短くなった」とは言えないということです。

疫学は「Aが増えればBが増える(正の相関)」「Aが増えればBが減る(負の相関)」「無相関(単なる偶然)」といったような相関関係で成り立っています。ですから、サンマと平均寿命の関係は「サンマを多く食べると短命な人が増える」と表現できます。

ですが、そもそも、短命になる原因はたくさん考えられます。

青森県は「塩分を多くとる傾向があり、急患に対応する病院やまた一人当たりの医師の数が少ないこと」でも知られています。他にも短命となる原因が様々にあるとすれば、一つに絞り込むことはかなり難しいといえます。

疫学では無理に一つの原因と結果を結びつけることで、全く違った結果を導き出してしまうこともあるのです。今回のサンマと平均寿命の関係も、無理に結びつけ導き出された結果で、サンマの摂取量と平均寿命の関係は無相関。つまり単なる偶然であるということが言えます。

原因と結果を結びつけることが難しい疫学調査で、「魚を多く食べる食生活が心疾患の発病を減らす」有効性が証明されています。つまり、青魚に多く含まれるDHA・EPAを積極的に摂取することで中性脂肪値が改善され、動脈硬化を防ぎ、心疾患の発症リスクが減るというわけです。

厚生労働省が推奨するDHA・EPAの摂取量は1日1000mgです。これは、クロマグロの刺身であれば8人前に匹敵しますが、サンマの塩焼きであれば一人前。やはり、サンマは健康食なのです。ですが、一人前とはいえ、毎日サンマを食べることは難しいと考えられます。サプリメントを上手に活用しながら、できる範囲で生活習慣を見直すことをおすすめします。

中性脂肪とイヌイットの関係

中性脂肪に良いとされるEPAが発見されたのは、イヌイットの研究がもとになっています。イヌイットは心臓疾患が少ないことから、その食生活から分析が行われた結果、EPAが発見されたのです。

心疾患が少ないイヌイット

イヌイットは日常的に魚を食べることで知られていますが、心臓疾患の患者が少ないことでも知られていました。その食習慣に注目が集まったことから1960年代後半から研究が進み、1970年代に結果が発表されました。
これによって魚に含まれるEPAが動脈硬化や脳卒中防止に有力な栄養素であることが判明したのです。

その後EPAの研究は進み、100%の純度のEPAの生成や、動脈硬化や高脂血症治療のための薬としても活用されています。EPAは医療の現場での活用実績があり、研究データが豊富なこともポイントになっているのです。そのため、安全性が非常に高く、サプリメントなどで摂取しても効果を実感しやすいのが魅力になっているのです。

必要な量を摂取するのは大変

魚にEPAが含まれる一方で、明確なデータに現れるほど魚を食べ続けるのは非常に大変です。これはイヌイットの食生活を日本で再現するのが難しいためで、大量の魚をひたすら食べ続ける難しさもあるのです。

また、食べられるものが非常に限られていた環境だからこそできたことであり、選択肢が豊富な現代では再現するメリットも少ない点も挙げられます。